市立芦屋病院の緩和ケア病棟では、一日でもいいから自宅に帰りたい、ふるさとをもう一度訪れたいという終末期のがん患者さんの願いをかなえるために、仮想現実(VR)の装置が活用されています。

 

患者さんは病室にいながら外出を疑似体験でき、気分の落ち込みが改善するなどの効果が表れているそうです。

 

2017年度から大阪大学大学院薬学研究科と共同で取り組み、5月末にはドイツで開かれたヨーロッパ緩和ケア学会で発表したそうです。

 

きっかけは17年の出来事で、同病院で帰宅がかなわない患者さんのために、ご自宅のカーテンを使って病室の模様替えをしたところ、とても喜ばれたそうです。

 

非常勤薬剤師で大阪大学大学院薬学研究科助教の仁木さんがその話を聞き、VRの活用を提案し、共同研究として取り組むことが決まり、17年11月から18年4月にかけて、20人の患者さんに体験してもらったそうです。

 

ふるさとや結婚式をした思い出の地、旅行先など患者さんの望みに応じて、関西や九州など各地で映像を撮影し、衛星写真による「グーグルアース」も活用したそうです。

 

体験前と体験後にアンケートで感想を尋ねたところ、不安感が減り、楽しみや幸福感が増す傾向が見られたそうです。

 

同病院薬剤部長は、「終末期には、薬が効かない苦痛や苦悩があり、患者さんのために何かできないかと考えてきた。 VRでは予想以上に良い結果がでたので、患者さんの希望を叶えることは、ご家族のケアにもなる」と話されています。

 

6/7 神戸新聞