一般社団法人「サイコロ」(鳥取市末広温泉町)が、うつ病や依存症などの精神障害についての知識を広め、適切に対応できる地域社会を実現するため、トークイベントや企業への助言、指導などに取り組んでいます。

 

精神障害は誰でもかかる可能性があるうえ、効果的な治療法があるだけに、サイコロでは、「精神障害について知り、できるだけ早く対処することが大切。

心の不調を感じたら気軽に相談してほしい」と呼びかけています。

 

サイコロ代表理事の谷口さんは、2006年から10年間、鳥取市内の総合病院に臨床心理士として勤めていました。

「公認心理師」という国家資格も持ち、欧米でうつ病や不眠症などの精神障害に効果があると実証されている認知行動療法を使って患者の支援にあたりましたが、病院は精神科医による薬の投与が中心で、一時的に症状が良くなっても、根本的に治らない人を多く見てきたそうです。

 

パニック障害や統合失調症などの精神障害は誰でもかかる可能性があるが、心の不調を感じても、治療を受けることに思い至らず、悪化した人も多かったそうです。

これは精神障害に関する知識が広まっていないためで、もっと多くの人に精神障害の種類や治療法である認知行動療法などを知ってもらう必要があると考え、2016年にサイコロを設立したそうです。

 

メンバーは公認心理師や研究者たちの4人で、治療活動として、鳥取県内の複数の企業と契約して、うつ病などの精神障害になった従業員の相談を受けたり、メンタルヘルスについての管理職研修を実施したりしているそうです。

また、心の不調を感じた一般の人からの有料の相談も受けているとのことです。

 

さらに知識の普及活動として、発達障害者とトークライブをしたり、うつ病について精神科医たち3人でパネルディスカッションをしたり、氷ノ山で精神障害について語り、森の中で瞑想(めいそう)する催しも実施したそうです。

 

谷口さんによると、現代はパソコンやスマートフォンの普及で脳の休む時間が少なく、脳のバランスが崩れて精神障害になりやすいということです。

「ものの受け止め方や考え方を変える認知行動療法は精神障害に効果があり、もっと多くの人に効用を知ってほしい。

また、鳥取という地域全体に精神的な病気に対する知識や理解を広めたい。」と話されています。

 

◆認知行動療法

現実の受け止め方や感じ方、ものの見方を「認知」といい、この認知を変えることで心を楽にして、悲観的な感情を減らしていく治療法。ストレスがたまって陰鬱(いんうつ)な気分になった時は、心のバランスが崩れて認知がゆがみ、不安感や否定的な考えが強くなってしまう。そこで反射的に浮かぶ考え方を変えて、バランスの取れた思考を取り戻し、ストレスや不安感にうまく対応できる心にしていく。困難を乗り越えていける心を育てる方法として最近注目されている。

 

9/6 ヨミドクター(読売新聞