2/10 日本経済新聞の掲載記事です。

 

 

 最近では生命科学の研究が進み、自然界にはありえない生物を人の手で創ろうとする試みが始まりました。実際に北海道大学や理化学研究所が、樹脂や医薬品の生産に生かす研究に名乗りをあげています。

 

 トヨタ自動車などと連携した北海道大学の研究チームは、二酸化炭素(CO₂)を取り込んでプラスチックに変える植物を創りました。プラスチックを作るために必要な成分をこれまでは化学合成でしか繋ぐことができませんでしたが、その役割を果たす人工酵素を遺伝子に組み込むことに成功したのです。これがうまく働けば、光合成で取り込んだCO₂からプラスチックを作りだすことができるはずです。これにより、「畑でのプラスチックの収穫」の実現に向けて大きなステップを踏み出すことができました。

 

 遺伝子工学は急速に進歩しています。人工酵素の遺伝子組み込みを「雪道を走る車」に例えると、これまでの遺伝子組み換え技術は「タイヤにチェーンを取り付ける」という方法であり、新しい技術は「タイヤを戦車のような無限軌道に改造する」という方法なのです。

 

 一方理化学研究所では、本来DNAは4つの文字(塩基)で記されているというところに、人工物質で2つの新しい文字を継ぎ足しました。この人工DNAは自然のDNAとそっくりの働きを示し、さらにこれまでにない生命反応も起こしたのです。この研究は薬などの開発にもつながるとみられています。遺伝子さえも、地球上に存在しない形に作り変えられるようになったのです。