各地の災害現場で経験を積んだ「災害派遣医療チーム(DMAT)」は、新型コロナウイルス感染症の出現で、昨年来、日本の医療現場が病床確保や患者の搬送調整に追われる混乱の中で、すでに全国250か所以上の施設で活動し、医療を支えてきました。

 

DMATは、災害や事故で多数のけが人が出た場合、現場近くに「医療救護所」を設け、応急処置をしていく経験から、効率的なベッドの配置を考えたり、医師や看護師のローテーション作成を助言したりと、積極的に携わったということです。

 

国の助言期間が「災害に近い状況」と指摘するほど感染が急拡大した今夏の第5波のまっただ中の8月下旬、横浜市内のホテルでは、厚生労働省から派遣されたDMATの医師たち4人が、自宅療養中に症状が悪化したコロナ患者に酸素投与をしながら入院先が決まるのを待つ施設「入院待機施設」の準備に携わっていました。

 

また、DMATの力を借りたことで、自宅療養者「ゼロ」を続けている自治体もあるそうです。

 

福井県は入院や宿泊療養が必要なコロナ患者について、搬送先を調整する「入院コーディネートセンター」を昨年4月に設置し、県内病院に勤務するDMAT隊員の医師、看護師たちが調整役を担っているそうです。

それまでは、県庁職員が受け入れ候補の病院に電話で依頼していましたが、断られることも多かったということです。

 

県の担当者は「医師や看護師の知識や経験を踏まえ、患者が必要な治療を見極めてから搬送先を決めるので、受け入れる病院側も安心感を持って応対してもらえるのではないか」と話されています。

DMATなどの指摘を受けて病床や宿泊療養施設を増やす取り組みも進めた結果、2020年から2021年10月6日時点まで自宅療養者は0人ということです。

 

医療機関で入院患者と職員のクラスター(感染集団)が起きた場合、感染者が勤務できないことにより、医師や看護師不足が起きています。自然災害で被災した病院でも同様の人手不足が起きることから、DMATは普段から、ほかの病院や自治体に医師たちの派遣を養成する訓練を重ねているそうです。

 

実際、昨年11月~今年1月に入院患者と職員の計214人のクラスターが起きた北海道旭川市の病院では、看護師が不足し、DMATが別の病院と調整してコロナ患者を転院させ、コロナに感染していない患者と、コロナ患者の病室を分けて感染防止対策も講じたそうです。

 

DMATは災害発生から48時間以内に活動を開始することが原則のため、初動の速さにも定評があります。

国のDMAT事務局次長で、同市の現場の指示を執った近藤医師は、「迅速に病院支援を始めることで、患者の死亡や感染拡大を抑えることが、活動を通じて分かってきた。感染症対応の研修を進め、コロナ医療を支えるDMAT隊員を増やしたい」と話しているそうです。

 

10/10 ヨミドクター(読売新聞)

DMAT事務局