食べ物をのみ込む力やかむ力が弱くなった人も「誤嚥」を起こさず食べやすい「嚥下食」を、レストランなどの外食店で提供する動きが広がりつつあります。

 

超高齢化社会の中で、食べる機能が低下しても「おいしく食べたい」という需要は高まっており、専門家は「人生の最後まで、好きなものを選んで食べられる社会になれば」と期待されているそうです。

 

神戸ポートピアホテルでは、2015年からホテル内の3店舗で、事前予約を受けたお客様の要望に応じて、食感や硬さを調節した料理を提供しています。

 

材料も盛り付けも、通常メニューとほぼ同じで、風味にもこだわっているそうです。

刺し身は、繊維を切りながらも魚の味わいを損なわないように心掛け、ステーキは、一度焼いた上で、ミキサーにかけたものをゼリーを使って固めますが、肉本来の食感に近づけるために試作を重ねて、切れ目を入れ、見た目も“本物”と変わらないそうです。

 

また、ウスイエンドウをすりつぶした汁物、酢の物はエビやタケノコが細かく刻まれて、とろみを付けた桜のゼリーが上からかかっているそうです。

 

東京医科歯科大学の戸原准教授によると、加齢や病気により食べる力が弱った人は、「摂食嚥下障害」と呼ばれる状態を含めて、推計で少なくとも120万人にも上ると言われています。

団塊の世代が75歳以上を迎える2025年を前に、その数は増加傾向にあるそうです。

 

戸原准教授らは嚥下食などを用意する飲食店の情報を、インターネットサイト「摂食嚥下関連医療資源マップ」に掲載しているそうです。

 

開始当初の2016年の登録数は13店舗でしたが、現在は全国で53店舗になります。

 

地域別では東京の11店舗が最も多く、東京ディスニーランドや大手外食チェーンも名を連ねているそうです。

 

地域の医療関係者と店舗などが手を組み、郷土食を食べやすくしようとする取り組みもあるそうです。

京都府や滋賀県の医療関係者でつくる「京滋摂食・嚥下を考える会」では、管理栄養士などのスタッフが京料理や和菓子の店と連携して、食材に酵素を染み込ませることで見た目や風味を保ったまま軟らかくした京料理や、口の中でくっつきにくい餅などを開発したそうです。

 

3/9 神戸新聞

 

摂食嚥下関連医療資源マップ