助産師が授乳指導や育児相談 注目集める「訪問型」産後ケア
出産後の母親に対する授乳指導や育児相談などで心身をサポートする「産後ケア事業」が、新型コロナウイルス禍で外出自粛生活が続く中、病院や助産所などでの「短期宿泊型」「通所型」に加え、ケア担当の助産師たちが母子の家に赴く「自宅訪問型」が注目されています。
「産後うつ」のリスクなどを背景に、産後ケア事業は今春から市区町村の努力義務となり、助産師や保健師たちが母親の体調やメンタルをケアし、授乳やおむつ交換の方法なども指導しているそうです。
産後ケアには3つの形態があり、そのうち短期宿泊型は費用が1日数万円かかるケースもあるようです。
また、短期宿泊型と通所型は医療機関を利用する場合は空きベッドが必要になり、何よりコロナ禍で外出を控える母子が増えている中、訪問型利用に期待がかかっているとのこと。
明石市は、昨年7月、訪問型について初回無料の「おためし券」を交付しました。
利用者からの要望を受け、対象を「生後5カ月未満」から「1年未満」に拡大し、助産師、保健師、保育士だけでなく、栄養士や心理士など専門職の訪問もできるようにしたそうです。
神戸市は宿泊型や通所型を比較的早く導入しましたが、訪問型は制度化されていなかったため、兵庫県助産師会は昨年7月、神戸市に制度化を要望し、同市は本年度中にも訪問型を制度化する予定とのことです。
日本周産期メンタルヘルス学会は昨年7月、会員の助産師、産婦人科医、精神科医、助産師、心理士、看護師たちに対し、コロナ禍における妊産婦の心理状態について調査し、回答した6割以上が、最初に感染が拡大した昨年3~6月、妊産婦からコロナに関する心の不調を相談されていたそうです。
「感染が不安で外出や受診ができない」「不安で落ち着かない」「気分が憂うつになった」といった相談が目立ち、最も多かったのが「本来のサポートを受けられない」ということで、具体的には、里帰り出産による親の援助や産後ケアを含む母子保健事業などだったそうです。
兵庫県産科婦人科学会会長で、パルモア病院(兵庫県神戸市)の山崎院長は「母子の生活状態に則した支援ができる訪問型の浸透は有意義」と評価の一方で、「うつ兆候の察知など、時には精神科医療の介入が必要な場合もある。出産施設の産科医と精神科医が緊密に連携する体制づくりが訪問型推進に向けて重要だ」と指摘しています。
10/3 神戸新聞